津田岳宏の事務所

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2012年11月24日 (土)

麻雀裁判

「麻雀人口はかなりの数にのぼり、しかもそのほとんどが賭麻雀であることは公知の事実である。賭博行為の処罰根拠に照らしても、金銭を賭けた場合、理論上であるにせよ、一律に賭博罪の成立を肯定することは余りにも現実と遊離した思考といえよう」
(岡野光雄著「刑法要説各論」から)

「少額の賭麻雀等の構成要件該当性は否定されるべきである」
(前田光雄著「刑法各論講義」から)



賭博罪で検挙された麻雀店の弁護を私が担当したとき、私は無罪の主張をした。

その店のレートは、テンゴ(1000点50円)とピン(1000点100円)であった。

刑法185条ただし書は、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は賭博罪にあたらない、としている。

テンゴやピンの麻雀で賭けられるお金は、まさに「一時の娯楽」という表現がぴったり当てはまる。

裁判でも、「一時の娯楽」に該当するので無罪である、と主張した。


しかし、裁判所は、私の主張をしりぞけた。


裁判所は、ピンはおろかテンゴについても、「一時の娯楽」にはあたらないと判断した。


この判断は、従前の判例を踏襲したものである。
「金銭は『一時の娯楽』にあたらない」とした大正時代の判例以降、裁判所はずっとこの見解を採っている。
この見解のもとでは、ピンだろうとテンゴだろうと賭博罪が成立してしまう。


これについては、刑法学者からの批判も強い。
冒頭で紹介したものの他にも、多数の刑法学者が、「少ない金銭を賭けた場合にまで賭博罪が成立するのはおかしい」という趣旨の記載を著書にしている。
そういう刑法学者計13名の記載を私は全て集め、裁判所に証拠提出した。冒頭のものも、もちろん提出した。

しかしそれでも、判例は変わらなかった。



裁判では、「競馬やパチンコが隆盛している中で、少額の賭麻雀を処罰するのはおかしい」との主張もした。



現在、競馬は盛んに宣伝されているが、誰も文句は言わない。
AKBを使って若者をターゲットにした宣伝をしても、「若者を賭博に勧誘してけしからん」と言う人は誰もいない。

パチンコは、これが「三店方式」で賭博にあたらないとしても、実質的には賭博と同じ機能を持つ。
しかもそこで動くお金は、ピンの麻雀の5倍、テンゴの麻雀の10倍程度である。
パチンコでは10万円の勝ち負けが日常茶飯事だが、ピンやテンゴの麻雀で10万円の勝ち負けはあり得ない。
しかし、パチンコを取り締まろうという動きはない。

競馬やパチンコが隆盛しても、誰も文句を言わない。
現代は、賭博に対して寛容な社会となったのである。
そのような中で、ピンやテンゴの麻雀を処罰して刑罰を与えるのは、一般社会通念に合致しないし、あまりにも不公平である。


こういう主張を強くしたのだが、認められなかった。


裁判所は、競馬について、
「関係法令の規制下にある公営賭博とそれ以外の賭博は一線を画している」
と判断した。

パチンコについては、何も根拠を示さず、
「パチンコに関する主張についても、それが本件行為の違法性に影響を与えるとはいえず」
と判断した。
パチンコがどうかと麻雀がどうかとは無関係である、という趣旨なのだろうが、その根拠を示してくれなかったのは残念である。


私としては全力を注いだのであるが、結論として無罪は勝ち取れず、みずからの力不足を痛感した。


ただ、言い訳になってしまうことを承知で書くと、裁判所は、従来の判例を覆す画期的な判断は、めったにしない。
それは、三権分立からの配慮である。

従来の判例を覆すというのは、ルールを変える、ということである。
ただ、国のルールを決める権限は選挙で選ばれた政治家が持つというのが、民主主義の大原則である。

裁判官は選挙で選ばれたわけではないので、ルールを勝手に変えてはいけない、と気を使う。
なので、ルールを変えるような画期的な判断をすることはめったにない。

仮に、判例を覆して、「ピンまでは合法」という判決を出したら、それは、裁判所が「ピンまでは合法」という新しいルールをつくった、ということになってしまう。


だから、なかなかそういう判断をしてくれない。


やはり、本気でルールを変えようと思ったら、政治に働きかけないといけないのである。

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コメント

賭け事も嫌いではないし、麻雀も好きなのですが、現状フリー雀荘には胸をはって遊びに行けません。
個人的には賭けなくても十分面白いゲームだと思いますし、麻雀業界が健全化目指すも合法化目指すもよしなんですが、今のただただ頭を低くしてるような中途半端な状況にはうんざりしています。
なんとかなってほしいです。

ちなみにパチンコについては、お店によりけりで、あくまで平均ですが、お客が玉1発打つにつき20銭程度の負けで、1分間に最大100発しか打てないんで、2時間遊んだ場合映画館で映画見るより少し高いくらいの負け額になるそうですよ。

>たっきーさん

たっきーさんのような方が胸をはってフリー雀荘に遊びに行けるようになればと、私も願っています。
現状で違法とされている以上、フリー雀荘にも頭を低くしないといけない事情もあり複雑なのですが・・
とにかく、世間のイメージを少しでも変えたいです。

パチンコは、平均負け額はご指摘のとおりかもしれませんが、勝ち負けの波が激しいので、それを裁判で主張しました。ギャンブル性の高さ=波の激しさ、なので。
まあ、裁判所には、「パチンコと麻雀は関係ない」とバッサリ切られましたがw


私は理系で法律にはずぶのど素人でよく分からないのですが、
「一時の娯楽」か否かを争点にしても、下級審に大審院判例を
覆す判断を期待することは難しいように感じます。

「金銭は僅少でも一時の娯楽に供する物とはいえない」というの
は旧憲法下での判例ですから是非最高裁までやって違憲審査
(適用違憲)をというのは素人考えなのでしょうか。
その価値のある問題だと思うのですが。

また、このような僅少な金額の賭け事は、現在の社会通念に
照らして可罰的違法性がなく、違法性が阻却されるのではとも
思います。

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こんにちは。ちょいちょい悪雄です。土曜日の夜、何か勝つ気がしないのにやってしまった麻雀。ツキがない。ツキがない時は打ち方も支離滅裂。レートはいつもの『$2/$4、最高 ... [続きを読む]

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