お客さん
私が大学生だったときの話。
当時私は,京都の某雀荘に入り浸っていた。
雀荘での成績を安定させるコツは,いつ打っても勝てる「お客さん」をたくさんつくることである。
祇園の一角に店を構えていたそのママは,私の一番の「お客さん」だった。
何せ,平気な顔でペンチャンを残しリャンメンを切る腕前である。
相性を云々するまでもなく,勝つのは簡単だった。
しかも,ママはその雀荘のオーナーとデキていたので,負け分は実質オーナー負担。負けても負けても,ママは来る。
遠慮なく勝てる最高のお客さんであった。
その夜も,ママと同卓した私は,勝つ気満々だった。
実際,出足から注文通りの連続トップ。
自由自在にアガリを重ね,場を,ママを,自らが支配していると感じた。
迎えた3半チャン目,東1局の中盤,南家のママが,序盤に一鳴きしていた南を横目で見ながら,口を開いた。
「わたし,南家だよね?」
南がないとアガれない手か。不調者の鳴きなんか気にすることないよな。
起家の私は,次巡急所の牌を引き,浮いていた東に手をかけた。どこまでも勝てそうな気がした。
「ロン」
おもむろに,ママが手を倒した。
東東北北①①①西西西 南南南(ポン)
ん?高い・・??
南,東・・トイトイ・・ホンロー・・ホンイツ・・っていうか役満やーん!
南家とか全然関係ないやーん!
ママの発言はマナー違反の一種だが,いつも勝たしてくれる相手,今後も仲良く打っていきたいだけに,指摘はしづらい。
こちらの考えを見透かした上での口三味線だった。
思わぬ小四喜振り込みで動揺した私の麻雀は,その後ガタガタ。押してもダメ,引いてもダメ。席を立ったときには大惨敗を喫していた。
帰り道,しょげる私に,友人が言った。
「オバハン,麻雀はドヘタやけど,三味線の使い方はプロやな。さすがは祇園のママやなぁ。」
虚実入り乱れる花街で,無数のお客さんを相手に看板を守っていたママからすれば,ケツの青い学生を口で転がすことなど造作もなかったのだろう。
その夜の私は,たったひと言で,ママの「お客さん」にされたのだ。
大人をナメてはいけない,と痛感させられたあの日から10余年。
雀荘を美化するわけではないが,少なくとも私は,学生時代に雀荘で経験した色々なことが,今の自分の仕事にも生きていると思っている。
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