津田岳宏の事務所

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2013年8月

2013年8月 9日 (金)

「Lets DANCE」は成功するか

皆様,お久しぶりです。
色々バタバタしていて数ヶ月放置してしまった本ブログですが,今日からまた更新していこうと思っています。



最近よく話題になっているのが,クラブの摘発問題である。

 
クラブは,風営法上,麻雀店やキャバクラなどと同じく「風俗営業」のひとつとされており,営業には公安委員会の許可が必要である。
しかし,実際には許可を得ずに実質的なクラブ営業をしている店も多い。


「風俗営業」の深夜営業は禁止されており,クラブ営業の許可を得たとしても深夜営業はできない。
しかし,クラブの売上の大部分は深夜にあがる。


また,「風俗営業」となると,金融機関からの融資が受けにくくなったりテナントの賃借がしにくくなるというデメリットもある。


それゆえ,深夜における酒類提供飲食店の届出のみを出して実質的なクラブ営業をする店も多い。


これらの店は,“グレー店”である。


黙認されていることが多く実際に検挙されることはあまりないが,無許可営業(違法営業)をしていることには違いなく,まれに検挙されることがある。
数年前に大阪で起きたように,それまで検挙されなかったのが突如として一斉摘発されて大騒動になることもある。
上記の六本木のクラブも,無許可営業で摘発された。
クラブが抱えている問題は,同じくグレー店であるフリー雀荘と同じである。



風営法の目的は,いわゆる「飲む」「打つ」「買う」の規制であり,ダンスを規制するのは風営法の本来的な目的ではない。
しかし日本では古くから,ダンスは享楽的な雰囲気にさせるもので売春を含む不健全な男女関係につながりやすいという考え方がされてきた。
実際過去には,ダンスホールのダンサーが売春婦まがいのことをしていた時代もあった。
それゆえ,風営法は制定当初からダンスを厳格に規制する姿勢を取り続けている。
1948年に風営法が制定されたとき,風俗営業は「接待飲食業」「ギャンブル営業」「ダンスをさせる営業」の3つに分類されていた。
「飲む」「打つ」「買う」ではなく,「飲む」「打つ」「ダンス」の3分類となっていたのであり,それくらいダンスに対して厳しい目が向けられていた。

その後時代は移り変わり,今のクラブは,少なくとも売春とは全く無関係である。
売春につながるから規制するという過去の論理は現代では通用しない。

にもかかわらずクラブが風営法で規制されているのは不当とも思え,最近では,クラブを風営法の対象から外せという運動が盛んである。
この運動のために平成24年に発足した「Lets DANCE」という団体には,坂本龍一らも署名して話題となった。


さて,「Lets DANCE」の主張が通りクラブが風営法の対象から外される日が来るだろうか。

率直に言って,そう簡単にはいかないであろう。

風営法の対象から外れるということは,人的要件や場所的要件の規制がいっさい外れるということである。
こうなると,たとえば小学校の隣でクラブを営業してもOKということになる。小学校の隣がクラブというのはちょっと・・というのが多くの日本人の一般的認識であると思われ,やはり対象から全く外せというのは容易ではないだろう。

クラブが酒と切り離せないのもマイナスポイントである。

風営法上,飲食店が深夜営業をするだけでは届出はいらないが,酒を提供する場合は届出が必要となる。
「普通の人も酒を飲むと人が変わる。だから規制が必要」という考え方が風営法の根底にある。
風営法から外せという運動が成功した数少ない例のひとつに,ビリヤードがある。
ここでは,業界が「ビリヤード場は酒を売らない」という方針を打ち出したのが最後の決め手になった。
しかし,クラブが酒を出さなければ商売にならないであろうし,この点も苦しいところである。

Lets DANCE」の運動を現実的に考えれば,営業時間の延長を勝ち取ることが第一の目標になるのではないか。
クラブの売上は,深夜に大部分があがる。
とすれば,深夜営業が禁止されるのは営業自体が禁止されるのと等しい場合もある。
これでは,憲法が保障する営業の自由に対する大きな侵害となる。
このあたりを主張して,営業時間の延長は何としても勝ち取りたいところだ。

そのためには,未成年者の立ち入り規制を厳格にすることが必須である。現在のクラブが規制される主な根拠は,「青少年の健全な育成」という要請にある。
「渋谷六本木 そう思春期もそうそうに これにぞっこんに♪」なんて歌があったが,ひと昔前には,やんちゃな高校生がクラブに出入りしているケースも多かった。

風営法は,クラブのような風営店が未成年者を客として立ち入らせることを禁じているが,過失による立ち入らせは不可罰とされている。
つまり「未成年には見えませんでした」という言い訳が通じるのであり,この点,ラスベガスのカジノが,未成年者を客として入れると理由を問わずライセンスの取消まであるという極めて厳格な規制をしていることと比較すると,日本の規制は緩い。
しかし,クラブが営業時間の延長を勝ち取りたいのであれば,この点を厳格に自主規制することが必須である。
未成年者が立ち入るおそれがあるということになれば,深夜営業など決して認められないであろう。
最近は,免許証やパスポートなどの顔写真付き身分証をきちんと提示しないと入場できない,という厳格な規制をしているクラブが増えていると聞く。この姿勢は徹底していくべきであろう。


クラブ業界が一枚岩になれるのか,というのも重要な問題である。
Lets DANCE」について詳しく書かれた「踊ってはいけない国,日本」「踊ってはいけない国で,踊り続けるために」(ともに河出書房新社)には,クラブ業界内に運動を歓迎する声がある一方,「そんな大々的に声をあげて警察に睨まれたらどうするんだ・・」という批判的な声もあると書かれていた。

クラブやフリー雀荘のようなグレー産業が合法化運動をするとき,業界が一枚岩になれないというのは,常に付きまとう問題である。
低レートのフリー雀荘を合法化しようという
運動にも,業界内で歓迎の声がある一方,「賭け麻雀を合法化なんてことを言って警察を刺激したらどうするんだ」という批判的な声がある。
低レート雀荘が摘発された事件で弁護人の私が違法性の低さをうったえて無罪の主張をしたときも,「無罪の主張などして警察を刺激してはいけない。検挙された以上,おとなしく有罪を受け入れた方がいい」などと言う人もいた。

グレー産業には,今現在グレー店を営み生計を立てている人たちがいる。
彼らには,今現在も検挙されて生活が破壊されるかもしれないという切実なリスクがある。
とすれば,「今のままで黙認されているのであればそれで十分。変に声を出して睨まれたくない」という声があがるのはやむを得ない。
ただ,その結果,業界の足並みが揃わなくなる。
足並みの揃っていない業界など,警察も世間も相手にしてくれない。
そして,運動は頓挫する。
グレー産業に共通する問題であり,この点を何とか克服しなければならない。


グレー産業といえば,パチンコもそのひとつである。
ここでもやはり,換金の合法化運動がおこなわれている。

どのグレー産業も,できるならホワイトになりたいと思っているのである。

これは本当に困難なことであろうが,クラブ,パチンコ,麻雀のようなグレー産業の合法化運動は,何とか結託していけないものだろうか。

たしかに,各々の業界にプライドはあるだろう。
しかし,「うちは文化だ」「うちは違法ではない」などと各々が言ったところで,しょせん一般世間からは,「風紀を乱しかねない産業」「小学校の隣で営業されたら困る」と思われている同じ穴のムジナである。
悪い偏見を持たれているという点で,等しく弱者である。

弱者であるということを自覚し,細かい思いを振り払って結託しない限り,大きな力は生まれないのではなかろうか。

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