津田岳宏の事務所

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2013年10月26日 (土)

カジノ合法化なるか

開催中の臨時国会で,いよいよカジノ法案が提出される見込みだという。


まあ,これについては毎年のように「いよいよ今年・・」と言われていることなのではあるが,今年に関しては,五輪開催が決定したことがかなりの追い風になっているようだ。


大きな歴史的出来事が,カジノ解禁につながることがある。
1931年にネヴァダ州(ラスベガス)でカジノが解禁されたときには,1929年からの世界大恐慌による大不況がひとつの要因となった。
五輪開催でたくさんの外国人が日本に来るとき,そこにカジノがあれば大きな経済効果が生まれるのは明白だ。
とすれば,たしかに今年は本当に法案が提出されるかもしれないと私も思っている。

この先,カジノの是非が本格的に議論になるのであれば,冷静な議論がなされることを切に希望する。
先日私は,弁護士ドットコムというサイトにカジノについて記事を書いた。
そこで「ギャンブルへの偏見が合法化への一番のハードル」と書いたら,「それを偏見というのが,偏見だ」というコメントが付いた。
なるほどそういう見方もあるのかと思わされ,「偏見」という言葉を用いた点は,ちょっと反省した。
いずれにせよ,「偏見だ」「偏見ではない」という議論は,全く不毛である。
カジノについては,感情的な不毛な議論ではなく,メリットデメリットを冷静に考慮した議論をしないといけない。



カジノのデメリットについて,「カジノで犯罪が増える」という意見は,過去の調査によれば間違っている。


1996年,アメリカで,約5億円を投じて,「国内ゲーミングの影響調査委員会」がつくられた。同委員会のメンバーは,
カジノ反対派と賛成派をバランスよく含むことを条件として決定され,議長はカジノ反対派であった。
同委員会は,中立的な立場から調査した上で報告書を作成したが,そこでの結論は「カジノを原因とする犯罪は増えていない」だった。
ちなみに,「ギャンブル愛好者は犯罪に走りやすい」というのも言われがちであるが,これも誤解だ。
1949年,イギリスで,ギャンブルのあらゆる側面を調査・検証する目的で,第2次王室委員会が組織され,約2年間緻密な調査をして膨大な資料を集め,報告書を作成した。
そこに,ウエークフィールド刑務所という刑務所のデータが添付されている。
これによると,受刑者の犯行原因のうち,1位は家庭不和で24%,2位はアルコール中毒で13%,賭博が決定的な犯行原因となっているケースはわずか2%であった。しかも,その2%の受刑者の中に,殺人や傷害致死などの重罪を犯した人はゼロだった。
これらのデータを踏まえ,報告書は,「ギャンブルを重大犯罪の直接原因と考えるのは無意味である。ギャンブルを詐欺行為等の小犯罪の直接原因であると考えるのも現在では全く重要性がない。」と結論付けた。

上記のアメリカやイギリスの調査以上に大規模・緻密・中立的な調査がされてカジノと犯罪の因果関係が立証されない限り,「カジノで犯罪が増える」という意見には,何らの説得性はない。

未成年への悪影響やマネーロンダリング対策は,上記記事でも書いたとおり,法規制により対処すればよい。
現在の風営法では,パチンコ店が高校生を入店させても「高校生に見えなかった」と言い訳すれば許される,という緩い規制がされている。
未成年の入場には厳罰を科し,厳格な規制をすべきである。


カジノの唯一最大のデメリットといえるのが,ギャンブル依存症者の増加である。
上記「国内ゲーミングの影響調査委員会」の報告によれば,カジノ愛好者のうち1~2%がギャンブル依存症になるのだという。
これは私見だが,競馬やパチンコが市民権を得ている日本では,依存症になるような人は既になっていると考えられ,カジノによって新たに依存症になる人が劇的に増えるとは思えない。
ただ,そうなる人が一定数出ることはたしかであろうし,この点への対策は必須である。
カジノ収益の一部は,依存症対策に用いられるようにすべきである。

ちなみに上記報告では,カジノ側に対し,依存症対策として
 病的ギャンブラーを認識・監視し,あまり賭けないようカジノが指導すること
 ATMの数を減らし,クレジットラインを引き下げること
 相談用のホットラインを見やすい場所に提示すること
などが求められている。参考にすべきであろう。

また,個人的にはあまり賛成ではないが,日本人の入場に対する強い規制,たとえば「30歳以上」「一定の所得以上」の入場のみを許すという案もあろう。
「配偶者からの要請があれば入場できないようにさせる」というシステムの採用もあり得る。


一方,メリットについて,大きな経済効果があることは明白だ。
20世紀以降にスタートした街で100万人都市になった例は,世界中でただ1か所,ラスベガスのみである。
現在,ラスベガスの人口は180万を超える。
カジノは,何もなかった砂漠を100年足らずで巨大都市にするだけのパワーを持つ強烈なコンテンツである。
最近も,マカオやシンガポールで,カジノは劇的な経済効果をあげている。
一般の人は,カジノというと,ラスベガスやマカオにしかないと思っている人もけっこういるようだが,現在,カジノは世界120か国以上に存在している。
イギリスはもちろん,フランスにもドイツにも,イタリアにもロシアにも,カジノはある。
前回2010年のサッカーワールドカップ,日本は,グループリーグでオランダ・デンマーク・カメルーンと対戦し,決勝トーナメント1回戦でパラグアイと対戦した。
日本が戦ったこの4か国も,全て,カジノを持っている国である。
カメルーンにもパラグアイにも,カジノがある。

そして,これらの多数の国で,国に最初につくられたカジノが失敗した例はない。
「カジノをつくっても成功するかどうか分からない」という意見には,全く説得力がない。


結局のところ,カジノについては,大きな経済効果というメリットと一定のギャンブル依存症者を生むというデメリットがあることが明白で,議論はここに尽きる。
感情的で不毛な議論を排し,確実な論点に絞った身のある議論をした上で政策決定すべきである。



現代人が過去の歴史を見て,「昔の人はバカなことをしていたんだなあ」と優越感をおぼえることがある。
しかし,同じように,300年後の人が歴史を見れば,現代人がしていることを「何てバカなことを」と思うことはたくさんあるはずだ。
たとえば,「○○お願いします。どうか○○お願いします!」とひたすら名前を連呼する選挙カー,あんなのは,未来人にバカにされる最たるものだろう。

民主主義の歴史は浅く,まだまだ発展途上である。
カジノに絡み,とかく「臭いものにフタ」という扱いをしてきたギャンブルに対し正面から向き合って,冷静に国民的な議論することは,いまだ不十分な民主主義の階段をひとつ上がることにもつながるのではないか。


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