津田岳宏の事務所

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2013年11月27日 (水)

十段戦堀内プロ失格事件に思う

十段戦で堀内プロが失格になった事件が話題になっている。

動画を見たり,経緯を読んだりしたが,僕も,事件を残念に思う一人だ。


流局間際に空切りしたとき,「ツモった牌を軽く叩き」「首をかしげ」「ため息をついた」ことがアンフェアな三味線にあたるというのが連盟の説明だ。

堀内プロのツイッターによると,三味線をする意図など毛頭なかった,ため息をついたおぼえはない,軽く叩いた(状態になった)のは勝負所なのでツモる牌に力が入ったからと釈明している。

法律家のはしくれらしいことを書くと,三味線をしたかどうかというのは,打ち手の主観の問題であり,主観の立証は非常に難しい。

勝負所なので,どうしてもツモりたくて力が入った,ツモれなかったので無意識にため息をついた(首をかしげた),というのは十分あり得る話であり,とすれば,堀内プロが否認している以上,本件で三味線をしたと断定するのは困難である。


なお,本件が問題になったのは,結果として瀬戸熊プロが1ソーを放銃し,三味線に引っかかったように見えたからである。
あえて「見えた」と書いたのは,僕個人は,瀬戸熊プロは三味線に引っかかって放銃したのではないと思うからだ。

動画を見る限り,たしかに同プロは,3巡前に出来メンツ崩しで7ソーを抜いてオリたものの,堀内プロの3ソー空切りの後に”間悪く”ツモッた4ソーを再び手中に収め,テンパイを取って1ソーを放銃している。
しかしこれは,三味線に引っかかってという単純な振込みではないと思う。
僕は同プロのブログもよく読んでいるのであるが,歴戦の同プロがそんな安易に引っかかるとは思えない。

問題の局面は8回戦という勝負どころで,小島プロ以外は微差で競っている。とすれば,できれば,テンパイ料が欲しい。
この局,瀬戸熊プロはドラの南を親リーチに勝負しており,ギリギリまで攻める意思だった(それでいてアタりの東は止めており,素晴らしいの一語である)。

堀内プロの3ソーは手出しである。
123の三色でリーチ現物の3ソーを引っ張るはずはないから,三色の今テンはあり得ない。
とすれば,オリたか空切りかであるが,確率的には,堀内プロが当該巡目に3ソーを引くよりも危険牌を引く確率の方がずっと高い(瀬戸熊プロから見て3ソーは捨て牌に1枚,手中に1枚だから,山に空切りの3ソーがいるのは”ワンチャンス”である)のだから,オリた確率の方がずっと高い。
また,万が一打ったとしても,南がアタマでなかったら安いし,ノーテン罰符と大差ない。
そもそも,堀内プロの打ち筋を考慮すると,仕掛けが形テン狙いの可能性もある。

瀬戸熊プロは,1ソーを切るまえに,かなり長考している。
これは,「三色テンパイで,南がアタマで,しかも空切り」というかなり低い可能性のリスクとテンパイ料のリターンを秤にかけていたのではないか。
そして,結果,1ソーを”勝負した”のではないか。
動画を見る限り,瀬戸熊プロの1ソーの打牌は,心持ち,強い。
それは,三味線を信じ安心している人の打牌ではなく,”勝負打牌”をしている人の打牌である。

瀬戸熊プロのコメントがないので何ともいえないが,僕は,同プロは三味線に引っかかって1ソーを打ったのではなく,勝負牌として1ソーを打ったはずと考えている。



本人が三味線をしていないと言っていて,当該相手も引っかかっていないとすれば,それは,もはや三味線はいえない。

穏やかではない仮定をして申し訳ないが(職業病である),動画を見る限り,仮に本件が裁判だったら,「三味線があった」と立証するのは極めて困難だろう。

それでもあえて処分の根拠を探せば,「三味線と取られかねないまぎらわしい行為」という非紳士的な行為をした”過失”(故意の立証はたぶん無理)に求められるのだろうが,この点について,規約などで対局者に事前の告知はあったのだろうか。
事前の告知がなかったとすれば,”失格”という処分は重きに失すぎ,予測可能性がない点で手続の適正も欠いていて,処分は不当に思われる。


うーん,我ながらちょっと感情的になってきたかな・・
いやホント残念に思うのである。


僕は,とくに堀内プロのファンではないのだが,この人の打ち筋はホント面白い。
今回の十段戦でも,2枚切れのペンチャンリーのみを即リーしたりいて,「そんなのする?」と驚かされるし,今までのプロにはなかった打ち方である。

麻雀に限らず,異端の新鋭が重鎮に挑む,という構図は面白い。

今回も,堀内プロがどういう戦いをするのかを楽しみに十段戦を見ていた人は多いと思われる。

将棋棋士の大平武洋さんは,ブログで,今回の事件は残念で,「麻雀はプロの方がたくさんいて、対局の配信が増えて日々の生活を麻雀ニートになろうとしている矢先の出来事でした。また1から計画の練り直しです。」と書いていた。

今回の事件で,大平棋士のような人は,他にもたくさんいたのではないか。

今回の事件で麻雀ファンが減ったのであれば,残念至極である。

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コメント

すごく分かりやすい説明で、自分の中でモヤモヤしていたものが少し晴れました(*^^*)

今回の件は俺もかなり残念だと思います。
簡単に言えば、ルール運用の公平性に疑問がある決定と思います。
(ペナルティポイントで済ます常識的判断がなかったことが一番の不手際でしょう)

ルール整備、罰則の明確化と相手が誰であろうと実施する姿勢はもちろんのこと、
今回のように、視聴者が判断できない情報が一番の根拠であるなどもってのほかで、
そうならないような体制を検討すべきと思います。

初めまして、「麻雀本を斬る!麻雀ゲームを斬る」から来ました。
あちらでは今回の騒動についてたくさんのリンクが貼られ、
様々な意見がありそれをすべて目を通しましたが、
こちらの津田さんの意見が私には一番しっくりきました。
私も、連盟の不手際や堀内プロの未熟さより
瀬戸熊プロがどう考えてるのか一番興味ありました。
私は彼のことをよく知らないので、今回の騒動は彼が一番悪者だとさえ思ってました。
彼のイーソを切る時の長考と強打は別の意味かと考えてました。
しかしあなたの記事を読んでいろいろなことがすっきりしました。
私も普段、麻雀するのでよくわかります。(特に天秤にかけていた箇所)
弁護士ならではですね。有難うございます。

はじめまして。
近代麻雀での主張を読ませていただきました。
合法化への取り組み、頑張ってあるなと思いました。

十段戦についてですが、3日目の課金契約問題についても言及いただくとうれしいです。
よろしくお願いいたします。

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