津田岳宏の事務所

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2014年9月18日 (木)

これからのカジノの正義の話をしよう⑤

正義への3つの考え方とその長所・短所・カジノへのベクトルをまとめると次のようになる。


 

政治が実現すべき正義

長所

短所

カジノへのベクトル

功利主義

最大多数の最大幸福

簡潔明瞭
中立的で差別がない

個人の自由と権利がないがしろにされる場合あり

是となりやすい

自由主義

個人の自由と権利

功利主義の欠点を補完しつつ,明瞭性と中立性も確保

格差と不平等が拡大

合意さえあれば何でも許されるのか

是となりやすい

美徳主義

美徳や善良な生活

個々のケースに柔軟に対応できる

曖昧
価値観の強制につながる

非となりやすい



最大多数の最大幸福や個人の自由と権利を重視すると,カジノは是となりやすい。
海外諸国での先例からカジノが雇用と税収の大きな増加を生むことは明白である(功利主義)。
また,カジノで遊ぶ自由もそれを経営する自由も個人の権利のひとつである(自由主義)。

一方,美徳や善良な生活を重視すると,非となりやすい。
カジノ(ギャンブル)を悪徳であると考えている人は多いだろう。

反対派が最近上梓した「カジノ狂騒曲ー日本に賭博場はいらない」という本の中にも

「カジノは最悪の賭博場であり,人間の弱みにつけこんで,胴元が巨額の利益をあげる『略奪のビジネス』です」
「カジノなどという,まがまがしい賭博を許さないという国民の良識がさらに高まれば,このたくらみを打ち破る可能性は十分あります」
「そもそも『虚業』でしかない博打に収入を頼ろうとすること自体(中略)人倫にもとる道だといわなければなりません」
といった,ギャンブル=悪徳論の記述がこれでもかというくらい出てくる。

このような美徳主義に基づく考えに賛同する人は多いかもしれないが,実はこれには大きな弱点がある。

ひと言でいうと,それは”古い考え方”なのだ。

古代社会や封建社会の政治は,美徳主義に基づきおこなわれていた。
何が善良で何が高尚かという価値観が前提となり,その価値観を実現するための政治がされていた。

たとえば,悪法として名高い江戸時代の「生類あわれみの令」

これも,動物虐待は悪徳であるという価値観だけを強調してつくられ(美徳主義),社会的コストの計算(功利主義)や刑罰の妥当性(自由主義)を何ら考慮していない法律なので,今では悪法とよばれているのである。

近代になると,美徳主義の曖昧さや権威的なところへの批判が高まり,論理的でシャープな新しい思想として功利主義や自由主義が登場し,今ではこちらの方が優勢だ。
まあ乱暴に麻雀に例えるなら,曖昧なオカルト打法が衰退してデジタル打法が主流になった,ということである。

美徳主義は,古い思想なのである。

カジノは悪徳なのでつくるべきではないという意見に対しては,悪徳か美徳かという曖昧な議論で政治的判断をすべきでない,という現代的思考による反論が効果的だろう。
とくに,カジノには大きな経済効果がある。
ある試算だと,70万人の雇用が見込まれるのだという。
それは,今現在失業していていたり低収入で苦しんでいる人にとっては大きな希望となるだろう。
とすれば,カジノは悪徳なのでやらないという判断は,美徳についての多数派の価値観によって弱者の仕事を奪うことにつながるのだ。
この理屈も,反論としては効果的だろう。


現代の美徳主義者は,ともすれば,女=結婚という古い価値観で凝り固まったセクハラ議員のようなことになる。
これはオカルト打法のようなもので,現代人の感覚では古くて受け入れがたい側面も強い。

賢明な反対派は,このことも認識しているようだ。
カジノ=悪徳論だけでは限界があることを分かっているようである。

なので,前述の「カジノ狂騒曲」の中にも,カジノをしたとしても成功するかどうか保障はない,ギャンブル依存症による社会的コストは大きい,など功利主義の議論での反対意見も強く書いている。

賛成派は,この議論では絶対に負けてはならない。
カジノがつくられた世界120か国以上で,その国で最初につくられたカジノが失敗した例はひとつもない。
依存症による社会的コストは,海外の調査により結果が出ている。それはカジノの経済効果を上回るものではない。

功利主義の土俵で賛成派が負けることはないし,負けてはならない。
そして,勝つにしても一分の隙なく完璧に勝つことが必要だろう。

結論としては,

①美徳主義の土俵では,その前提がそもそも古い考えであることを指摘して防御
②功利主義や自由主義の土俵では徹底的に攻めて勝つ

という議論の進め方が,賛成派にとって一番いいだろう。

配牌が悪い局は上手に守り,配牌が良い局は隙なく徹底的に攻めるべしということである。




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