津田岳宏の事務所

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2014年11月

2014年11月29日 (土)

言わなきゃよかったのだが,それでも

銀座のクラブでのバイト歴を申告したことで女子アナの内定を取り消された事件が話題になっている。

ニュースを聞いてまず思ったのが,言わなきゃよかったのに,ってことだ。
彼女はエントリーシートにはクラブのバイト歴は書いていなかったようだ。
ならばそのまま最後まで,しれっと隠しておけばよかった。
それで正式採用されてしまえばこっちのものだった。
その後になって,クラブでのバイト歴を申告しなかったことが発覚しても,おそらくそれで解雇されることはなかった。
法律上,社員を解雇するというハードルは非常に高い。
過去のバイト歴を申告しなかったという理由で解雇することはきわめて困難だ。

たとえば,パチンコ店で働いていた店員が,過去にフーゾクで働いたことがばれて解雇され,解雇が無効であると訴えた事件がある。
この事件で店側は,フーゾクでバイトしていた過去を申告しなかったことは虚偽申告に該当し解雇事由にあたると主張したが,裁判所は認めなかった。
裁判所は

「採用を望む者が,採用面接に当たり,自己に不利益な事実の回答を避けたいと考えることは当然予測されるので,採用する側もこれを踏まえて採用を検討すべきであるところ,本件職歴に関しても自発的に申告するべき義務があったとはいえない」

として,解雇を無効とした。
正社員であれアルバイトであれ,採用面接を受けるとき,自分に不利益になりそうな経歴を申告する法律上の義務はないのである。


彼女としては,我慢してもう少し隠し通せばよかったのだが,現状でも不利というわけではない。
本件では,すでに内定が出されていた。
内定が出れば,学生はもうそれ以上の就職活動はしない。だから内定取消などされると,就職浪人の可能性が高くなり,学生の被る不利益は非常に大きい。
この点にかんがみ,法律上,内定が決まると「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認」される場合にのみ内定取消が許容されることになる。

会社としては,「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認」される場合であることを立証しなればならないのだが,このハードルはそんなに低くない。
これが一般の女子社員なれば,おそらく会社に勝ち目はない。
ポイントは,テレビ局の看板娘的役割を担いイメージが大切な「女子アナ」という特殊性がどれだけ考慮されるかであるが,給与的には一般社員もアナウンサーもそんなに変わらない,等の事情を考えれば,まあ会社としてはなかなか苦しいだろうな,と僕は思っている。

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2014年11月28日 (金)

銀座のクラブは暴利行為?

弁護士ドットコムなんかでは,僕は風営法に詳しい弁護士として紹介されることが多い。

たしかに風営法に精通している弁護士はあまりいないので,それに詳しいのは僕の特徴だ。
風俗営業である麻雀店から相談を受けることが多い僕は,風営法を扱うことが多い。
手元には,自作した風営法の判例集もある。
今日はそのうちから一つ紹介する。 

(事例)
Aは銀座高級クラブのママであるBを気に入って,足しげく店に通うようになった。
ほどなくABは個人的にも親密となり,肉体関係も持った。
そんなある日,ABから1000万円を貸してほしいと頼まれてポンと貸した。
その後もABの行き続けたが,代金は支払わず「ツケ」にすることが多かった。
しばらくして,ABの蜜月関係は終焉を迎えた。
その後AはBに対し,1000万円の貸金返還請求訴訟を起こした。
これに対抗してBはAに,3800万円の飲み代のツケを請求する代金請求訴訟を起こされた。


女子アナの内定取消騒動で最近話題となった銀座のクラブ。
ツケが3800万円にもなるとは,さすが銀座である。
莫大な「ツケ」を請求されたAは,訴訟で以下の反論をした。


店は名義貸や時間外営業などの風営法違反の違法営業をしていた。だから代金契約も公序良俗違反で無効である。

 自分はBを待つために店に行っていたのであり,Bからは「あなたの分はママの私
がおごるから」と言われていた。だから自分の飲み代はBの負担かもしくは店からの無料サービスとして提供されたものである。

 請求されている分には,1回の飲み代が67万円余になっているのもあって法外に高額である。1回の代金が20万円を超える部分は暴利行為であり公序良俗違反で無効である。

 店から料金体系を説明されたことは一度もない。だから,代金支払の合意は存在しない。



①は,お前の店は違法だから金を払わんという主張だ。
麻雀店も含め風俗営業店は,こういう主張がされることがよくある。
しかし,こういう駄々っ子みたいな主張は裁判所は認めない。
裁判所は


「風営法違反は行政上の取締規定であり,これに違反する営業によってなされた私法上の効力まで否定する趣旨ではない」

とし,Aの主張を斥けた。
風営店への規制は,善良の風俗という公益的な観点からなされている。
そういう公益的な規制を「金を払わん」という私益のために主張することはお門違いであり,認められない。

 

②について,
Bを待つために店に行っていた云々の主張は,要するに「自分の女がママをしている店に行っていた」という“特別性”を考慮してほしいという趣旨の主張だ。
たしかに遊び人の中には“オトしちゃった女”の店には行きたがらなくなる人もいる。それを承知のママが“関係後”の
Aを店にひっぱるために「私がおごるから」「店にサービスさせるから」などと言って誘うというストーリーはありそうだ。
しかし裁判所は「1000万円を借りるほどお金に困っていたBが『おごる』と言うのは考えがたい」としてAの主張を認めなかった。
このあたり,裁判所は基本的に男女の微妙な機微は考慮せずに形式的な判断をすることが多い。



③について,1回の飲み代が60万円以上とはたしかに目の玉が飛び出る。
ただ銀座ならそんなものかなとも思う。普通に考えると高過ぎるが,そもそも普通じゃないのが銀座の高級クラブだろう。
この点裁判所も

「暴利行為とは,他人の窮迫,軽率,無経験等に乗じて不当な利益を収奪する行為をいうところ,銀座の高級クラブにおける飲食代金が極めて高額であることは公知の事実であり,暴利行為には該当しない」

と判断した。銀座のクラブなんてのは高いのを承知で行くわけだから「暴利行為」「公序良俗違反」とはいえないという理屈である。



④については,Aがツケにせず支払っていた分については店からの請求額を素直に支払っていることが指摘され,説明義務違反の主張は認められなかった。
もっともこの点は,店の主張が全面的に認められたわけでもなかった。
裁判所は

「会計伝票等の記載は客の関与なく店が一方的に記載するものであり,各会計伝票の記載内容の正確性を確認する手段がなく,店が実際の注文より多い注文があったとして不正に代金を請求することも可能である。それゆえ,客が会計伝票の内容を確認した上でサインするなどしない限りは,会計伝票どおりの飲食があったと認めるのは相当でない」

とし,結論として店の請求額の50%についてのみAの支払義務があるとした。
「不正請求が可能」とは,クラブ関係者からすると失礼な話かもしれないが,本件で問題になったのは約10か月分の飲み代で,いかに銀座とはいえ10か月で3800万円のツケは高額過ぎるという裁判所の判断があったのだろう。
暴利行為で無効とはいわないがまあ半分くらいで済ましてあげなさい,というある意味喧嘩両成敗的な判決である。


上記の判断は,高級クラブのツケに対する裁判所の感覚が示された例として意義深い。
今後同種の事件が起きたとき,本件の「伝票額の50%」という基準が必ず適用されるわけではないが,ツケの総額が高額な場合は,少なくとも店の伝票どおりの請求がそのまま認められない可能性は高い。「ツケ」や「売り掛け」は高級クラブの文化のひとつかもしれないが,これにはやはり回収のリスクがつきまとう。
ちなみに,クラブのツケのような飲食代金は1年間で時効消滅してしまう。1年間請求せずにほっておくと,もはや回収できなくなる。


(まとめ)

①風営法違反の店でも代金支払義務はある。
お前の店は違法だから金は払わん,という主張は認められない。

②銀座のクラブは高いのを承知で行くものだから飲み代がウン十万円になっても「暴利行為」「公序良俗違反」とはいえない。

③ただし累積したツケがあまりにも高額になった場合は,店の伝票通りの請求が認められない可能性が高い。


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2014年11月24日 (月)

パチンコ三店方式の問題点

弁護士ドットコムから頼まれて,パチンコ三店方式の問題点について記事を書いた。
あの記事は字数が制限されていてちょっと書き足りなかったので,ここで補足しておく。

風営法23条1項2号は,パチンコ店が賞品を買い取ることを禁止している。
これを認めると,現金の提供を認めるのと同じで,実質的に賭博になってしまうからだ。

同条の趣旨は,パチンコが実質的に賭博になることを禁じる点である。
とすれば,三店方式にしたところで,実質的に賭博になることは同じなので,三店方式は違法という結論になる可能性は十分にある。
そのような見解をとる刑法学者もいる。

三店方式は,判例はないが違法となる可能性があるというもので,グレーである。
グレーであることが原因で,大手パチンコチェーンがJリーグチームのスポンサーからおろされる,パチンコ関連企業が上場できない,などの事態が発生している。

ついでに書いておくと,古物営業法は1万円以上の取引については身元確認を要求しているが,交換所の買取では1万円以上であっても身元確認はされない。この点は完全に違法である。


パチンコのような誰もが知っている大規模産業にグレーな部分があることは,国として恥ずかしいことだ。海外への示しもつかない。
これはすみやかに,ホワイトかブラックにすべきだ。
僕個人は,ホワイトに,すなわちパチンコ換金は合法化してかわりに厳格な規制をおくべきと考えている。

理由として,まず今さら違法にすると,多数の失業者が出てしまう。
また,そもそも三店方式が導入された理由は,当時パチンコの景品買いに暴力団が盛んに介入していたところ,これを排除するためであった。
もしも三店方式(換金)を違法にすれば,再び景品買取りがアウトローのビジネスになる事態が容易に想定される。
違法にしたところで,景品を換金したいというニーズは必ず残る。そこにアウトローが触手を伸ばすのは自明の理だ。
アルカポネが莫大な利益を得たのは,禁酒法というバカな法律が施行されたからだ。
パチンコユーザーの数は多い。彼らの多くは,景品の換金を望んでいる。
今さら換金を違法にすると”日本のアルカポネ”をうみ出しかねない。


最近は,パチンコ換金を禁止しようとしている政治家もいる。
このような動きを歓迎する声も多い。
そういう声は,パチンコ自体を糾弾する声とほぼパラレルだ。
グレーでありながら大きな利益を上げているパチンコ業界は,ただでさえ批判の的になりやすい。
しかもパチンコには,北朝鮮への送金問題のように,国民を激しく憤らせるような問題もある。
パチンコ換金を合法にするのであれば,パチンコが最大限国益に資するようなシステムの構築が不可欠である。
「日本国に貢献するパチンコ」という姿勢を全面に出さない限り,国民は合法化に納得しない。
パチンコ税の導入,社会福祉活動の義務付け,会計の徹底した透明化などと引き換えに換金を合法化するのが最善だと僕は思っている。



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