津田岳宏の事務所

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2014年11月28日 (金)

銀座のクラブは暴利行為?

弁護士ドットコムなんかでは,僕は風営法に詳しい弁護士として紹介されることが多い。

たしかに風営法に精通している弁護士はあまりいないので,それに詳しいのは僕の特徴だ。
風俗営業である麻雀店から相談を受けることが多い僕は,風営法を扱うことが多い。
手元には,自作した風営法の判例集もある。
今日はそのうちから一つ紹介する。 

(事例)
Aは銀座高級クラブのママであるBを気に入って,足しげく店に通うようになった。
ほどなくABは個人的にも親密となり,肉体関係も持った。
そんなある日,ABから1000万円を貸してほしいと頼まれてポンと貸した。
その後もABの行き続けたが,代金は支払わず「ツケ」にすることが多かった。
しばらくして,ABの蜜月関係は終焉を迎えた。
その後AはBに対し,1000万円の貸金返還請求訴訟を起こした。
これに対抗してBはAに,3800万円の飲み代のツケを請求する代金請求訴訟を起こされた。


女子アナの内定取消騒動で最近話題となった銀座のクラブ。
ツケが3800万円にもなるとは,さすが銀座である。
莫大な「ツケ」を請求されたAは,訴訟で以下の反論をした。


店は名義貸や時間外営業などの風営法違反の違法営業をしていた。だから代金契約も公序良俗違反で無効である。

 自分はBを待つために店に行っていたのであり,Bからは「あなたの分はママの私
がおごるから」と言われていた。だから自分の飲み代はBの負担かもしくは店からの無料サービスとして提供されたものである。

 請求されている分には,1回の飲み代が67万円余になっているのもあって法外に高額である。1回の代金が20万円を超える部分は暴利行為であり公序良俗違反で無効である。

 店から料金体系を説明されたことは一度もない。だから,代金支払の合意は存在しない。



①は,お前の店は違法だから金を払わんという主張だ。
麻雀店も含め風俗営業店は,こういう主張がされることがよくある。
しかし,こういう駄々っ子みたいな主張は裁判所は認めない。
裁判所は


「風営法違反は行政上の取締規定であり,これに違反する営業によってなされた私法上の効力まで否定する趣旨ではない」

とし,Aの主張を斥けた。
風営店への規制は,善良の風俗という公益的な観点からなされている。
そういう公益的な規制を「金を払わん」という私益のために主張することはお門違いであり,認められない。

 

②について,
Bを待つために店に行っていた云々の主張は,要するに「自分の女がママをしている店に行っていた」という“特別性”を考慮してほしいという趣旨の主張だ。
たしかに遊び人の中には“オトしちゃった女”の店には行きたがらなくなる人もいる。それを承知のママが“関係後”の
Aを店にひっぱるために「私がおごるから」「店にサービスさせるから」などと言って誘うというストーリーはありそうだ。
しかし裁判所は「1000万円を借りるほどお金に困っていたBが『おごる』と言うのは考えがたい」としてAの主張を認めなかった。
このあたり,裁判所は基本的に男女の微妙な機微は考慮せずに形式的な判断をすることが多い。



③について,1回の飲み代が60万円以上とはたしかに目の玉が飛び出る。
ただ銀座ならそんなものかなとも思う。普通に考えると高過ぎるが,そもそも普通じゃないのが銀座の高級クラブだろう。
この点裁判所も

「暴利行為とは,他人の窮迫,軽率,無経験等に乗じて不当な利益を収奪する行為をいうところ,銀座の高級クラブにおける飲食代金が極めて高額であることは公知の事実であり,暴利行為には該当しない」

と判断した。銀座のクラブなんてのは高いのを承知で行くわけだから「暴利行為」「公序良俗違反」とはいえないという理屈である。



④については,Aがツケにせず支払っていた分については店からの請求額を素直に支払っていることが指摘され,説明義務違反の主張は認められなかった。
もっともこの点は,店の主張が全面的に認められたわけでもなかった。
裁判所は

「会計伝票等の記載は客の関与なく店が一方的に記載するものであり,各会計伝票の記載内容の正確性を確認する手段がなく,店が実際の注文より多い注文があったとして不正に代金を請求することも可能である。それゆえ,客が会計伝票の内容を確認した上でサインするなどしない限りは,会計伝票どおりの飲食があったと認めるのは相当でない」

とし,結論として店の請求額の50%についてのみAの支払義務があるとした。
「不正請求が可能」とは,クラブ関係者からすると失礼な話かもしれないが,本件で問題になったのは約10か月分の飲み代で,いかに銀座とはいえ10か月で3800万円のツケは高額過ぎるという裁判所の判断があったのだろう。
暴利行為で無効とはいわないがまあ半分くらいで済ましてあげなさい,というある意味喧嘩両成敗的な判決である。


上記の判断は,高級クラブのツケに対する裁判所の感覚が示された例として意義深い。
今後同種の事件が起きたとき,本件の「伝票額の50%」という基準が必ず適用されるわけではないが,ツケの総額が高額な場合は,少なくとも店の伝票どおりの請求がそのまま認められない可能性は高い。「ツケ」や「売り掛け」は高級クラブの文化のひとつかもしれないが,これにはやはり回収のリスクがつきまとう。
ちなみに,クラブのツケのような飲食代金は1年間で時効消滅してしまう。1年間請求せずにほっておくと,もはや回収できなくなる。


(まとめ)

①風営法違反の店でも代金支払義務はある。
お前の店は違法だから金は払わん,という主張は認められない。

②銀座のクラブは高いのを承知で行くものだから飲み代がウン十万円になっても「暴利行為」「公序良俗違反」とはいえない。

③ただし累積したツケがあまりにも高額になった場合は,店の伝票通りの請求が認められない可能性が高い。


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コメント

すごく勉強になりました!
②の部分が自分の中で意外です(゜o゜)奢りと言われてもお金を支払わないといけないとは…

今後も更新楽しみにしています(^∇^)

>雀ゴロKさん,コメントありがとうございます。
②の部分について裁判所は,そもそも「おごる」という発言はなかった,と認定しました。「おごる」発言があったと認定されていれば,支払義務は消えると思います。

ちなみに「雀ゴロKの麻雀日記」というブログなら,僕もよく読んでますわ(^∇^)

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