津田岳宏の事務所

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2015年2月 3日 (火)

賭博事犯の捜査実務

事務所の顧問である警察OBに僕がよく聞くのは,賭博罪の捜査技術についてである。賭博罪を専門とする弁護士としては,取り締まる側の当局の考え方を知ることは必須事項だ。

捜査技術というものが内部的な側面が強いからなのかもしれないが,賭博捜査について詳述している本はほとんどない。
そんな中,「賭博事犯の捜査実務」という本は貴重な1冊だ。
今ではアマゾンでも手に入らないくらい古い本ではあるが,現役の検察官2人が賭博捜査について詳細に解説している。

この本は,賭博捜査の専門知識が細かく記してあって非常に勉強になるのだが,着目すべきは,著者の検察官が,賭博罪の違法性が「程度問題」であることをはっきり認めている点である。
たとえば,序文からこんな記述がある。


賭博は人間本能に根ざしているものである
「賭ける」こと自体を悪徳と断じ切れるものではない
なにゆえにその禁止は絶対的,一義的なものではなく,弾力的,相対的なものを含んでいるかを十分に理解しておくことは,賭博犯捜査に従事するうえで,基礎的な教養であるといえよう


賭博は絶対的な悪ではなく,賭博の禁止が「弾力的」「相対的」であることを理解するのが,賭博捜査をする者にとって基礎的な教養だ,と言っているのである。
ひらたく言えば,賭博だからといって何でも取り締まるのはダメだ,と言っているのである。

ページを進めると,こんな記述もある。


判例はかなり厳しい態度を示しており,金銭は,その額にかかわわらず「一時の娯楽に供するもの」にあたらないとしているが,これを文字どおり解釈し,現金の授受があったらなんの問題もなく犯罪が成立すると速断することのないように留意しなかればならない


現役検察官が記したこの本で口すっぱく書かれているのは,賭博については,むやみに検挙してはならないということである。
その理由については,むやみな検挙は国民からの反発を招くからだと書かれている。
たとえばこの本では,小規模賭博の検挙は現行犯検挙にとどまるべきだと書かれており,非現行の賭博犯の捜査をすべきでない理由としてこう書かれている。
過去の些細な事件で,根堀り,葉堀り調べつくすことにより,市民に,警察の市民生活に対する不当な干渉という印象を与え,民心の離反を招来する幣も考えねばならない


さらに,麻雀賭博については,よりはっきりとこう書かれている。


麻雀賭博は,いわゆる素人である一般サラリーマン,学生,さらに最近は主婦などの間にも広まっている(中略)あまりにも些細,軽微な事案まで検挙しようと試みることは,市民から無用の反発を買う結果となる


ささいな賭け麻雀を検挙すると,国民からの反感を買うのでダメだ,とはっきり書かれていることは注目に値する。


以上から考えたとき,麻雀店など賭博罪との関係を考慮すべき立場の営業者すれば,風紀を乱さないための配慮を徹底し,「ここを検挙すれば,逆に市民から反発を買うな」と当局に思わせるような体制・スキームをつくればよいということになる。



しかしそれはさておき,「程度問題」であり,「弾力的」「相対的」であることを検察官自身が認めるような刑罰規定の存在は,本来,明確性の原則からすれば許されない。
もうこのブログでも何度も書いているので,飽きられるかもしれないが,新年初の更新なので一応書いておこう。

現行賭博罪は,すみやかに改廃すべきである。



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