津田岳宏の事務所

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2015年5月 9日 (土)

外には見せるな、中は隠すな

賭博罪は風紀に対する罪である。
これを野放しにすると風紀が乱れるから,というのが賭博罪の基本的存在根拠だ。

風紀が乱れているかどうかの判断権は,日本では伝統的に,警察や検察などの行政(以下,まとめて「当局」という)に委ねられてきた。
現在でも,賭博罪の扱いについては,当局に大きな権限がある。
ささいな賭博を執拗に検挙すると逆に国民の反発を買う(から注意せよ),ということは現役検察官が書いた捜査マニュアル本に書かれており,当局は,全ての賭博を検挙するわけではない。
検挙する必要あり,と判断した賭博だけが検挙される。
そして,当局が処罰の必要性ありとして検挙して起訴すれば,裁判所はその判断を重視し,そのまま有罪判決を下す。
以上のプロセスのもと,処罰されるかどうかの判断権は,実質的には,司法ではなく行政が持っている。
これは,いわゆる「法の支配」の観点からは問題ありともいえるのであるが,適切な法の運用という観点からは,具体的な風紀の乱れの判断は司法よりも行政がするのが適しているので,このような扱いは,今後もずっと続くであろう。

よって,取り締まられる側からすれば,風紀罪についての当局のスタンスを知ることがとても重要だ。
このスタンスがよくあらわれている条文があるので,今日はそれを紹介する。


風営法施行規則 第8条

法第四条第ニ項第一号の国家公安委員会規則で定める技術上の基準は、次の表の上欄に掲げる風俗営業の種別の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるとおりとする。
風俗営業の種別 構造及び設備の技術上の基準
法第二条第一項第一号又は第三号に掲げる営業 一 客室の床面積は、一室の床面積を六十六平方メートル以上とし、ダンスをさせるための客室の部分の床面積をおおむねその五分の一以上とすること。
二 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
三 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
四 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
五 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
六 第二十九条に定めるところにより計つた営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
七 第三十一条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
この条文は,キャバクラなどの設備基準を定めた条文である。
注目してほしいのは

二 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
三 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。

の部分だ。
読んで分かるとおり,法は,内部を外部から容易に見通すことができないことを要求した上で,内部には見通しを妨げる設備を設けるな,と要求している。

一見すると,矛盾しているようにも思える規定である。
見せたらダメなの?見せるべきなの?どっちなの?と言いたくなる。

しかし実は,相反するように見えるこの条文の内容に,風営業者及び風紀に対する当局の要求が詰まっている。

もう一度よく読んでほしい。

法はまず,「外部から」見えなくすることを求めている。

その上で「内部に」,すなわち中に入った人にはよく見えるように,と求めている。


外から見えないことを求めているのは,中の空気を漏らさないためだ。

法律及び当局の基本的考えは,「行為そのもの」よりも「行為に伴う空気が外に漏れること」により風紀が乱れる,というものである。

僕がブログや講演などで口酸っぱく言っている「公然としてはダメ」ということだ。
実際の話,「賭博をする」だけなら,当局は(もちろん違法行為ではあるが)そこまで厳しく目くじらは立てない。
「賭博を『公然と』『おおっぴらに』『外から分かるかたちで』する」ことにより,当局の見過ごせない事態になるのである。
賭博をしていることが外から見ても明らかになることによって,賭博をしているという空気が外に漏れて風紀が乱れる,という考え方なのである。

「外には見せるな」

これが,風紀を乱しかねないものに対して当局が要求している第一の事柄だ。


次に法は「内部はよく見せること」を要求している。
外からはよく見えないようにした上で,中に入った人には内部をよく見えるようにしろ,と要求している。

これは,外からよく見えないにもかかわらず自発的に内部に入ってくる人に対しては風紀上の保護を考えなくてもいいし(法はそういう人は仕方がない,という考え方である・笑),外には見せない,というのをいいことに内部で悪質な違法行為がおこなわれることを防止するためだ。
さらにはもっと実質的な大きな理由として,警察が調査のため中に入ったときによく見えるようにしておくため,というのもある。
あなたたちは風紀を乱しかねないのだから警察のために調査しやすくしておきなさい,と法が求めているのである。

「中は隠すな」

これも,当局が要求している大切な事柄だ。


外には見せるな,中は隠すな。

一見矛盾しているようにも見えるこの要請が,風紀に対する当局のスタンスのキモである。
関係者は,覚えておいて損はない。


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